カミサマという名の神様
「ねぇ、ママ。どうして神様は神様って言うの?」
「そうねぇ・・・・・」
「神様には名前がないの?」
「そうねぇ・・・・・」
「ねぇ、ママ。聞いてる?」
矢水暦3052年15月30日
小さな小学校に
小さな角が一つ額から突き出た小さな子供がやってきました。
「こんにちは。カミサマといいます。」
小さなその子は自分を”カミサマ”と言いました。
みんなはきょとんとしています。
先生がその子を不思議そうに見ています。
小さな子供は首をかしげました。

クラスの子供達もマネして首をかしげました。
「こんにちは、カミサマ。」
「こんにちは、先生。」
先生はぺこりと頭を下げて挨拶をしました。
カミサマは同じように頭を下げて挨拶をしました。
「今日から、一緒に勉強していきましょうね。」
先生は、カミサマを席に案内して授業を始めました。
「今日は数の数え方を勉強しましょう。」
先生は、細長い棒を持って黒板を指しました。
「これは、1み、2み、3み、4み・・・・・」
授業はドンドン進んでいきます。
先生はふと新しくクラスメイトになった
カミサマの方に目をやりました。
すると、その子は一生懸命両手を使って数を数えていました。
不思議なその子供は授業が終わった後も、お昼休みが始まった時も、下校の時間になっても
ずっと数を数えていました。
クラスの子供達は、その不思議な子の周りを囲んで、その子が首を縦に振りながら、
指を一生懸命折りながら数を数えているのを
ずっとおしゃべりをしながら見ていました。
「そろそろ、帰る時間ですよ。」
先生は言いました。
「カミサマ帰ろう?」
赤い服を着て長い髪をふたつに結んだ男の子が言いました。
「帰らないの?カミサマ。」
青い服を着て坊主頭の背の高い女の子が言いました。
二人がそういうとカミサマは手を止めてにっこり笑うと言いました。
「うん。帰ろう。」
長い道を三人は歩いています。
三人のうち二人は山に住んでいます。
赤い服を着た男の子は、家では女の子を演じています。
青い服を着た女の子は、家では男の子を演じています。
赤い服を着た男の子は、「さや」といいます。
青い服を着た女の子は、「ゆう」といいます。
二人ともおかあさんが、変になっています。
さやは言いました。
「おかあさんは僕を女の子として見ているんだ。
おにいちゃんは犬だと思われているから外で寒そうにしてる。」
ゆうは言いました。
「おかあさんは私を男の子として見ているよ。
おねえちゃんをお父さんの愛人だと思ってるからひどくいじめているんだ。」
小さな不思議な子供は、二人の話しているのを
悲しそうな顔をしながら聞いていました。
そして、
「ここは、みんなそうなの?」
と言いました。
すると、
「そうだよ。」
二人は不思議そうに返事をしました。
「カミサマが前にいたところはそうじゃなかったの?」
「うん。」
カミサマは二人に小さな袋を手渡しました。
「これなぁに?」
二人は不思議そうに袋の中に何も入っていないのを確認すると聞きました。
「これは、幸せ。」
「入ってないのに幸せ?」
「うん。」
小さな子供は小さな角を光らせて小さなお社のある山の方へと消えていきました。
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