カミサマという名の神様
草木をガサガサと音をたてて
昨日叫んでいたおばあさんは
なぜかおじいさんの格好をして木の陰から出てきました。
「おまいさん達何を願った。」
おじいさんはものすごく怒った様子で
杖を振りかざしながら二人に聞いた。
二人はことのあらましを説明した。
二人はまだ小さいので、
言葉を巧く使えな得なかったようだが、
理解してもらえたようだった。
「はぁ。」
おじいさんはため息をついてどっこいしょ。と
切り株に腰を下ろすとまたため息をついて話しだした。
「おまいさん達が、出会ったその小さな角の生えた子供は、この上のお社の主だの。」
「ぬし?」
「そう主。」
「わしゃが小さい頃に友が出会うたことのあるぬしだの。
その時はおまいさん達がもういやだと思った前の姿が、
かの友が願った姿やっての。それからはずっと、わしゃ女としてすごしょっただい。」
はぁ。とため息を吐きつつ懐からタバコを取り出すと火をつけた。
「でも、主が現れたっつことは、願い時だったんだの。」
おじいさんは少し嬉しそうに煙を吐いた。
「さて、学校に行ってこい?そろそろ時間だの?」
「わぁ!!ゆう!!行こう!!」
「うん!!」
二人はおじいさんの指した腕時計の針を見て
慌ててカバンをからうと大急ぎで学校の方へと向かった。
その日、あの小さくて不思議で、
小さな角を額から生やした子供は現れなかった。
二人は先生にその子のことを聞いたが、覚えていなかった。
二人は開いている席をじっと見ながら、
一生懸命両手で数を数えているあの不思議な子供を考えていた。
「あの子名前なんだっけ?」
さやは言った頭をかきながら。
「名前なんだっけ??」
ゆうは長い髪をクリクリ弄りながら言った。
二人は考えても考えても
”カミサマ”という言葉しか出てこなかった。
「校長先生に聞こう。」
さやは言った。
すくりとさやは立つとゆうの手を引いて校長室に急いだ。
「先生?”カミサマ”って何?」
「”カミサマ”?よく知っているねそんな昔の言葉。」
校長先生はクルリと丸いイスをまわしながらこちらを向いて言った。
「古い言葉??」
二人はきょとんとした。
確かにあの不思議な子供は自分を”カミサマ”と呼んだ。
でも、それが名前だと信じて疑わなかったから、
意味がよく分からなかった。
「カミサマってのはな、信仰すべきものだったんだよ。昔はね。
でも今は信仰する物もないし、古い言葉はいらなくなったんだ。
君らそれどこで聞いたんだい?禁止されている言葉だろう?」
少し校長先生の目の奥がこわばっていた。
何か異端な物を見るような目をした。
何となく先生の態度が怖くなったゆうは、
さやの腕を引くと逃げるようにその場を去り、
入っちゃいけないと言われた山の頂上まであがった。
「このことは二人の秘密だね。」
ゆうはしょんぼりしながら言った。
「うん。カミサマには会えないのかな。もう。」
さやは足下の小石を蹴りながら言った。
二人は手をつなぐとお社があった場所に
生えている大きな木の下にちょこんと座った。
そして、さわさわと風で揺れ動く枝を見上げながら、
そっと目をつむった。

(僕達が忘れなければいいんだ。カミサマ、ありがとう。)
白い服を着て長い髪を一つに束ねた女の人と、
黒い服を着てタバコを吹かしている男の人の間で、
赤い服をきて長い髪を二つに結んだ女の子が聞きました。
「ねぇママ。神様に会ったことある?」
「そうねぇ・・・・一度だけ。小さな不思議な子供に。」
「パパは?」
「そうだねぇ・・・・一度だけ。小さな角を額から生やした子供に。」
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